「俳優の○○さんは、今回の映画撮影にあたって、役作りで8キロのダイエットを行ったそうです!」
「えー!?」「すごいですね〜!」「さすが○○さんはストイックですね〜!」
テレビを見ていたら、MCと演者がやり取りをしていた。こういう光景を見ると、いつも思う。
当たり前のことを何を大げさに
8キロのダイエットだろうが、10キロのダイエットだろうが、役作りでそんなことをおこなうのはプロなら当たり前のことだ。
確かに体重がすでに40キロの人が、8キロのダイエットをするのは大変だろう。32キロという、およそ健常な成人とは思えない体重となってしまう。もしかすると、健康に影響が出てしまうかもしれない。
ただ、だったら初めからオファーを受けなければいい話だ。映画を撮影するにあたって、8キロのダイエットが必要で、その出演オファーを受けたなら、ダイエットをするのは当たり前だろう。
もちろん、単純に宣伝メッセージの一つとして取り上げているだけなのだろうが、まんざらでもない俳優の顔や「○○って、超ストイックだよね〜」と紹介してくる友人を見ていると、いたたまれない気持ちになってしまう。
同じような感情になるときが他にもある。
毎月10冊の本を読んでます?
先日あるセミナーの映像を見ていたら、コンサルタントの講師が毎月10冊の本を読んでいることを誇らしげに語っていた。
なんでも「新幹線の行きと帰りで1冊の本は読める。月に10日は出張があるので、毎月10冊の本を読んでいる」とのことだった。
「これだけの本を読んでいるから、セミナーができるし、コンサルティングもできる。本がセミナーやコンサルティングのネタ元になっているのです」と続けていた。
私はコンサルタントではないし、ウチはコンサルティング会社ではない。だが、しがないスモールビジネスの私たちでも、月に10冊程度の本は当然のように読んでいる。果たして、本がネタ元の彼にコンサルティングができるのだろうか?
別に本をたくさん読んでいるからといって、コンサルティングスキルが高いということにはならないと思うが、どうせなら10冊読むコンサルタントより30冊読むコンサルタントに依頼したい。
もっといえば、ネタ元が本じゃなくて、商売の現場から得た知見のコンサルタントに依頼したい。これが多くのスモールビジネスオーナーの本音じゃないだろうか。
プラスのアピールのつもりが、マイナスのアピールになってしまっているわけだ。
こんな勘違いは他にもある。
年商10億円超えのコンサルタント?
あるコンサルタントは、年商が10億円以上あるという。
しかも、コンサルティング会社としてじゃなくて、いわゆるひとりビジネスオーナーとしての年商だ。
どんなやり方をしたら、一人で年商10億円以上も稼げるのか。少し気になるところではあるが、こういうコンサルタントに師事する人は、どういう了見なのだろう?見当もつかない。
そもそも、コンサルタントは、自分の売上よりもクライアントの売上向上に貢献する仕事ではないか。売上の多寡などは瑣末な話だ。100億だろうが、1兆だろうが大事ない。
世の中には、たくさんの種類のコンサルタントがいる。ウェブ集客コンサルタント、リピート戦略コンサルタント、起業コンサルタント、販売促進コンサルタント…etc
いずれにしても、自らの向上よりもクライアントの向上が仕事のはずだ。クライアントの売上向上の自慢はしても、自らの売上向上の自慢をするのは、ちょっと違うだろう。
理解に苦しむが、「私にコンサルティング依頼をすると、私の売上が上がります」と言いたいのだろうか?どう考えても反対で、「私にコンサルティングを依頼すると、あなたの売上が上がります」だろう。
自慢するのは、自分の売上向上ではなく、クライアントの売上向上である。「私が○○億円稼ぎました」ではなく、「クライアントが○○億円稼ぎました」である。
自分の売上より、クライアントの売上
クライアントは、コンサルタントの売上に貢献したいわけじゃない。コンサルタントに、自らの売上に貢献してほしいのだ。
クライアントの成果が出ているのなら、そのクライアントの成果を伝えればいい。自慢するのは、「私が○○億円稼ぎました」ではなく、「クライアントが○○億円稼ぎました」である。改めて、弱い犬ほどよく吠えるという表現は言い得て妙だと思う。
ウチは起業してからずっと、セミナー撮影業をおこなっていた。著名なコンサルタントのセミナーや塾、養成講座も撮影していた。
彼らに共通していたのは、徹底的なクライアント志向だ。私たちの知る限り、超一流のコンサルタントほど、クライアントの黒子に徹していた。
クライアントの話は嬉々として語ってくれるが、間違っても自らの売上の自慢なんてしないし、むしろそういう類の話には、ためらいを感じているようにもみえた。
話は戻るが、やはり、自らの売上をPRしているコンサルタントに師事する人がどういう了見なのか。皆目、見当もつかない。
クライアントはコンサルタントの鏡
クライアントは、コンサルタントの鏡だ。
売上拡大を重視するコンサルタントのクライアントは、売上拡大を重視する。お勉強が好きなコンサルタントのクライアントは、お勉強が好き。刺激的な表現をするコンサルタントのクライアントは、刺激的な表現に反応する。
実践を重視するコンサルタントのクライアントは、実践を重視する。家族を大切にするコンサルタントのクライアントは、家族を大切にする。クライアントを大切にするコンサルタントのクライアントは、クライアントを大切にする。
コンサルタントを選ぶときには、コンサルタントはもちろんのこと、そのコンサルタントのクライアントも見ていきたいものだ。
仮にコンサルティングを依頼するなら、そのクライアントが未来の自分の姿なのだから。